2008-07-07

中薬の憶え方

中医学を学ぶ中で、一番大変なのは
はやり「中薬学・方剤学」につきます。

中薬学とは、中薬(生薬)の一つ一つを学んで行き、
方剤学は、方剤(中薬を組み合わせた処方)を学びます。

鍼灸は非常に学びやすい(頭に入りやすい)のに対し、
中薬学・方剤学は、膨大な暗記量を要求されます。

おそらく私の鍼灸の勉強量は2割くらいで、
8割は中医薬に割かれていると思います。

現在、120時間の授業のなか380ほどの中薬を学び
さらに120時間で400近い方剤を学ぶ予定です。



それぞれの中薬の、

味(5味:辛、苦、甘、酸、塩辛)

気(4気:寒・涼・熱・温 ー いずれにも属さない平もあります)

帰経(どの経絡に入って行くか)

という基本的な性質に加え、
(これについてはまた後で書いてみます)
作用および臨床適応を憶えていきます。
この作用は少なくて2つ、大抵は3−5くらいでしょうか。

プラス、その中薬を目で見て
見分けられるようにならなければなりません。

似たようなものが多い中、
これも結構大変です。



想像して頂けるだけで分ると思いますが、
かなりの記憶量となります。

私は現在270ほどの中薬を学びましたが、
試験のために憶えるだけで、
終わってしまえばすべて忘れてしまいます。

どうやって憶えるか・・・。

これには実は英語の詩を作って憶えています。
中国には憶え方の詩の本(中国語)が売られているのですが、
どうやら日本語にはないようでした。
ならば自分で作るしかありませんよね。

基本的に2行詩で、韻をふむのが原則ですが、
270もの詩を作って行く中で
どうやったら思い出しやすいかが分ってきました。

憶える内容はすべて英語なので、
英語の詩の方が作りやすく憶えやすいというのもあります。

そして実はこの詩の作成には内助の功があって、
主人が殆ど作ってくれています。

詩を作るというのは以外と時間がかかるので、
作らない分、他の勉強をすることができ
非常に助かっています。



お恥ずかしいのですが
一つ私の詩をご紹介しましょう。

先週憶えた中薬、枇杷葉(中国名 Pi Pa Ye)

Peter-Paul yells when he Coughs out Yellow Sticky Sputum from Lung-Heat on his shirt
Burt (he doesn't yell, but..) Belches & Vomits from Stomach-Heat even in a music concert


この薬は、止咳平喘薬 - stopping cough & asthmaの
カテゴリーに含まれるということは
まず最初に憶えておかなくてはなりません。

その上で、この詩さえ憶えていれば、
この薬の作用、どういう時に使うか、
(大文字で始まっている単語がそれです)
どの経絡に入って行くか、
そして性も大体予想がつきます。

Lung-Heatによるcough with yellow sputum、
Stomach-Heatのために起こるrebellious Stomach-Qiによる
vomiting, belching (ゲップ)を抑える
というのが基本的な使い方ですが、
これにより胃経と肺経にはいっていくというのは分り、
clearing heat(清熱)作用があるので、
おそらくcold (実際にはslightly cold 涼)の性であろうと
想像もつきます。

限られた文字の中で、最大限の関連付けをして
できるだけたくさんのことを思い出さねばなりません。

Peter-Paulは男性の名前ですが、
Pi Pa YeのPi Paの部分から思い出せるようになっています。
Burtは同じく男性の名前ですが、
一行目の行末の韻、shirtととも韻を踏んでおり、
これから思い出せるようになっています。



お恥ずかしい限りの作品ばかりですが
こんな感じで400ちかい中薬を憶えて行って、
同級生たちにはどうやって勉強しているのかと聞かれるほど
効果を発揮しています。


2008-07-03

知は力なり〜世界中どこにいても治療できる

私の鍼灸の先生の一人であるDr. Yは
非常にポジティブ人間でいらっしゃって
いろんな面で学生に夢と希望を与えてくれます。

授業の合間合間に、
鍼灸の素晴らしさを説かれるのですが
その一つを紹介したいと思います。



医師が患者さんを診るとき、
診断が簡単な場合は
その場で処方せんを書きますよね。
例えば風邪や急性膀胱炎の場合、
そのお薬を飲んで軽快、治癒すれば、
再診となることもありません。

ですが、中には検査をしなければ
診断できない場合もあり、
診断できなければ、
根本的な治療はできません。

つまり受診当日は検査オーダーがでて、
その検査の結果が戻ってくることに再診となり、
その時点で診断が付けば
治療方針が決まるわけです。

さらなる検査が必要な場合は、
また治療の段階には進めません。

診断ができなければ治療ができないし、
その診断には時間がかかるだけでなく
医療機器(画像診断なり血液検査なり)必要となります。

勿論、一時的に症状を軽快させる薬の処方は可能ですが
それは根本的な治療ではありません。



一方、東洋医学(特に鍼灸)はどうでしょうか。

東洋医学では、患者さんからの情報だけで診断ができます。

情報は、四診からなっていて、


望診(視診のことです。特に舌をみる舌診が重要です)
問診(いわゆる問診ですが、特殊な質問があります)
切診(触診のことです。主に脈をみる脈診、日本の東洋医学は腹診もあります)
聞診(聞くだけでなく、ニオイにも注意します)



ここから得られた情報だけで、
東洋医学的に診断が可能なのです。

そして診断ができたなら、
鍼さえあれば、治療はでき、
つまりどこにでも出張治療に行けるのです。

Dr. Yが強調されているのは、

西洋医学のドクターが、
医療機器に診断を委ねながらしか
治療ができないのに対し、
鍼灸は、鍼さえあれば
どこでも治療ができるという

鍼灸の素晴らしさを説いている

ということですが、これに加えて、

四診から正しい診断をして治療をするには
正しい知識がなければ困難である。

つまり知識の詰まった腦と鍼さえあれば、
どこに行こうと治療ができる!

とにかくできるだけ知識をどん欲に詰めこもう!


ということを学生に伝えたかったのだと思います。



まさにその通りだなぁと思いっきり頷いてしまいました。

知識の詰まった腦ががまさに診断機器。
できるだけたくさん詰め込まなくては。
益々を持って勉強に励もうと再び意を決した私でした。



Dr. Y,素晴らしいお話をありがとうございました。


2008-07-01

指の関節の痛みが消えた!

半年くらい前の話しです。

私の中指の二番目の関節(=近位指節間関節)が
痛い時期が続いておりました。

最初は朝だけだったのが
一日中続くようになったり、
片手だけだったのが
両手になったり・・・,
人差し指にまで始まったり・・・。

この関節の朝のこわばりは
「関節リウマチ」の
初期症状として有名です。

これが数ヶ月も続いたので

あぁ,いやだわーーー
リウマチかも・・・(泣)

なんて思っていた時のことです。

私より先に中医学を習い始めた先輩でありクラスメートと
グループが一緒になり,話す機会が時のことです。

そのクラスメートは彼自身中国系でもあり
非常に優秀な人です。

彼に私の手の関節の痛みの話をしたのですが、
私なんてすぐ「リウマチ」予備軍なんて
考えちゃうのですが、彼は・・・

「Stagnationじゃないの?
 ほら,Tuina (推拿)のクラスで習っただろう
 このマッサージ(と言って私に示す)。
 これをやってごらんよ!」

なんて中医学的にすぐ考えられちゃう彼。
私も見習わなくちゃ!



ということでそのマッサージ、
その後の授業の間に続けていたんですけどね、
不思議なんですけど、
その後、消えちゃったんですよ。

びっくり。

それから半年。
痛みは一切ありません。



ちなみにここでのstagnationとは
日本語では「気滞/血滞」と
呼ばれていると思います。

「気」とは身体の中で起こっている
すべての生命活動をおこすエネルギーで,
身体の中をぐるぐる回っています。

血液は、この気の流れとともに流れ、
つまり気の流れが滞れば、
血液の流れも滞る。
これが,気滞,血滞と呼ばれます。

この気や血液の流れが滞ると
そこに痛みを起こすようになります。

血滞が慢性的なものになれば、
これは「瘀血(お血)」と呼ばれ、
これが西洋医学で言われる「悪性腫瘍」の
原因になると言われています。



今回私が自分に行ったマッサージは
捻法 Twiddling methodと言われていて
指の関節を捻り動かす方法です。
細かい振動を与えることにより
気の流れ、血の流れをよくするんだと思います。

こんな原始的な?方法で
ここ数年時々悩んでいただけでなく
ここ数ヶ月で持続、悪化してきていた関節の痛みが
治るなんて正直未だに信じられませんが、
以来,痛みからは全く解放されています。



素晴らしいですね、東洋医学。

tag : 東洋医学 中医学 推拿

2008-06-04

逆子治療

今日,ランチを食べながら,
Baby Storyなんて番組をたまたま見ていました。

これはアメリカの番組で,
妊婦さんの妊婦生活から分娩,そしてその直後を
ドキュメンタリーで紹介するものです。



今回の放送の妊婦さんがは,胎児が骨盤位(逆子)。
これが治らなければ,C-section(帝王切開)が予定されていました。



彼女のパートナーが医師でなんですが,
「僕は医師だけど,鍼もやるんだ」と,
その彼女に鍼を刺しておりました。

おぉーーー、あの穴かなっ?
わくわくどきどき。


そうです,私も習った,逆子直しの経穴(UB-67,至陰)に
彼は鍼を刺しておりました!



そして,なんとその後の超音波検査で
胎児の位置は正常位となり,めでたく正常分娩!



この穴,第5趾の外側の爪のそばにあるんですけどね。
こんなところに鍼を指すだけで,
骨盤位が直っちゃうって,ある意味すごいですね。

私自身の経験はまだありませんが
鍼灸師さん方のお話に寄ると結構効き目があるようです。



どうなんでしょう。
こういうのって実際に臨床に取り入れていらっしゃる
産科の先生っていらっしゃるのでしょうかね。

私が日本で産婦人科医であったならば
すぐに取り入れちゃいます!


2008-04-15

お腹の痛みが消えた!

正直なところ,西洋医学に従事する医師たちの多くは
東洋医学に非常に懐疑的なのは知っていますし,
なにせ私もその一人でした。

「頭痛が消えた!」という記事を
書いたばかりではありますが,
また驚きの経験を致しました。

******************************


今日の夕食後の話しです。
食後1時間か2時間くらい経っていたでしょうか。
突然激しい腹痛に襲われ,トイレに駆け込みました。

ご想像どおりお腹を下したのですが,
それで収まりません・・・。

とにかく出るものもないのに
お腹全体(上下腹部)がまさにcramping。
痛いのなんのって。

身体を丸めて汗かいてました。

腐った物を食べても大丈夫な私の胃腸。
こんなことが過去にあったという記憶はありません。

15分くらいうずくまっていたんですが
一向に改善の兆しがありません。

9時からは毎週楽しみにしている
ドラマが始まるというのに,
こんなところにはこもっていられません。

心配してやってきた主人にお願いして
私のAcupuncture Travel Kitを取ってもらい,
下腿にある足三里(ST-36)というツボに
鍼を打ち込みました。

お腹が痛かったので片足だけです。
それが精一杯。



あらら,不思議。
痛みは徐々に消えて行き,
5分後にはトイレをでてました。



この足三里。
前日お話しした合谷と同じように
四総穴の一つです。

肚腹三里留(「肚腹とふく三里に留め)
といい,つまりですね,
お腹の病気は、足の三里に鍼や灸をすると楽になりますよ
ということなんだそうです。

この足三里はいろんなリサーチも行われているくらい
有名なツボです。



取りあえず、ソファに座り
再び,今度は両脚のST-36に鍼を打ち
ドラマを見ながら、暫く様子をみました。



私的には,三分の二,驚いて信じて
残りの三分の一は,たまたまよくなったという
気持ちも無い訳ではないんですけどね。

でも鍼を打つ時はお腹が痛くて
身体を丸めながら打ってましたが
その直後すっと引いたのは事実です。

もしあのとき鍼を打っていなかったら
もっと長い間トイレにうずくまっていたのでしょうか。




((後日談))


まだまだ鍼灸学の基礎を学んでいる私ですが、
本日こんなことを学びました。


急性の下痢を含めて大腸の病気には、
大腸の下合穴 Lower He-Sea pointが有効である。

ということです。

この穴はStomach Channel (胃経)上の穴で
ST-37 Shangjuxu 上巨虚という経穴です。

今回の私のような胃の痛みというより
臍の周りから下のお腹の痛み、下痢には
どうやらこちらの穴の方が治療としては適しているようです。


まだまだ学ぶことがたくさんあります。






Profile

Dr. Emmie

Author:Dr. Emmie
日本で丸々11年間,臨床勤務医として働き,医学博士号も取得しました。縁あってカナダに移住となり、以前から興味のあった東洋医学(伝統中医学)を正式に学ぶことになり、現在に至っております。

西洋医学一辺倒だった私が、東洋医学に出会って、その素晴らしさに目覚めたことから、このタイトルをつけました。このブログは多くの人に東洋医学に興味を持って頂けたらという願いと、患者さんに東洋医学の基礎概念を提供できたらという願いをもって,作り始めました。

西洋医学の知識と経験を生かしながら、西洋医学では扱いにくい/治療困難な病気/症状に特に取り組んでいきたいと思っています。

初めての方は、是非↓のカテゴリー内の「はじめに」をどうぞ!

また、東洋医学の基本を学びたい患者さんのために、 「やさしい東洋医学入門」も用意しました(完成するのにまだまだ時間がかかりそうですが、長い目で見てやってください)。

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